関東甲信東海地方では6月27日に梅雨が明けました。例年よりも大幅に早い梅雨明けに戸惑った方も多かったかと思います。しかし、近年の天気予報は高度な電子機器の利用で精度が上がっています。実際、梅雨明け後は連日の猛暑で、熱中症に警戒しなければならない事態になっています。
高度な電子機器の利用といえば、6月24日、GPS(全地球測位システム)機器を悪用して、知人女性の居場所を調べたという男性が「ストーカー規制法」違反容疑で逮捕されました。報道によれば、男性は好意を寄せていた女性のリュックにGPS機器を密かに入れ、女性の位置情報をパソコンや携帯端末で確認していたとのことです。
ストーカー規制法は、度重なるストーカー事件を受けて制定・改正されてきた法律です。
同法では、同一人に対して「付きまとい」「待ち伏せ」「見張り」「押し掛け」「うろつき」等の行為を繰り返すことを「ストーカー行為」と定義し、かかる行為を取り締まるため、警察による警告・禁止命令や罰金・懲役の刑罰を予定しています。
従前、警察はGPS機器の悪用は、同法上の「見張り」に該当するという解釈の下で摘発してきました。
ところが、最高裁は、令和2年、被告人が、元交際相手の使用していた
自動車にGPS機器を密かに取付け、多数回にわたり当該自動車の動静を把握した行為について、同法上の「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには、GPS機器等を用いる場合であっても、対象者の「住居等の付近」という一定の場所において、同所における対象者の動静等を観察する行為が行われることを要するが、被告人による被害者の自動車の位置情報の検索は、駐車場から離れた場所において行われたものであり、また、駐車場を離れて移動する当該自動車の位置情報を取得する行為は、もはや、同法の「住居等の付近において見張りをする行為」には該当しないという判断を下したのです。
要するに、当時の法律の規定がGPS機器の普及に追いついておらず、実務上無理をして拡大解釈していると指摘された訳です。
そこで、令和3年に同法が改正され、GPS機器等を用いて対象者の位置情報を取得した場合には、「住居等の付近」でなくても、実際に対象者がいる場所の付近で「見張り」等をする行為や、対象者の位置情報を無断で取得する行為自体を規制対象に加えたのです。
もっとも、警察がGPS機器の利用に神経質になっているのは、
警察によるGPS機器を利用した犯罪捜査の是非を巡って議論が分かれていることも理由のひとつかと思われます。以上