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『GPS機器の利用制限(2)』

 梅雨明け後も全国各地で大雨が続いています。河川の氾濫や土砂災害の発生が心配されています。
 他方で、新型コロナの感染者数も急拡大しています。既に第7波入りし、医療体制がひっ迫している状況です。政府・自治体は、従前のような行動制限を採用していませんが、これで大丈夫なのか心配が尽きないところです。
 さて、今回もGPS(全地球測位システム)機器の利用について、法律上の問題点をご説明します。
 前回は「ストーカー規制法」違反容疑者の逮捕事件をご紹介しました。
 ストーカー規制法とは、度重なるストーカー事件を受けて制定・改正されてきた法律です。令和3年改正法では、GPS機器等を用いて他人の位置情報を取得する行為が規制対象に加えられました。
 前回ご紹介した事件は、警視庁が改正法に基づいて初めて容疑者を逮捕した事件だったことから、マスコミが大きく報道したといわれています。
 加えて、警察がGPS機器を利用した犯罪捜査について神経質になっていることも、大きく報道された理由のひとつかと思われます。
 すなわち、かつて警察は、GPS機器を利用した犯罪捜査は「任意捜査」であり、「強制捜査」と異なって裁判所の許可状(令状)は不要であるから、一応の内部基準を定めた上で、秘密裏にGPSを捜査に利用していました。
 しかし、GPS捜査の適法性については全国的に争われていて、各地の裁判所の判断も様々に分かれていたのです。
 そこで最高裁は、平成29年、捜査員が自動車を利用した広域窃盗事件の被告人らの車両19台にGPS端末を取付け、約半年間に渡り捜査したという事案について、このような捜査手法は個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから「個人のプライバシーを侵害するもの」であり「公権力による私的領域への侵襲を伴うもの」であるから「令状がなければ行うことのできない処分」であると判示したのです。
 つまり、GPS捜査は「強制捜査」に当たるから、裁判所の令状がない限り違法であり、捜査結果は証拠として認められないと判断したのです(もっとも他の証拠により被告人らは有罪でした。)。
 さらに、最高裁は、GPS捜査は個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、令状で対象車両や対象者を特定しただけでは被疑者の行動を過剰に把握することを抑制できないこと、GPS捜査は被疑者に知られず秘かに行うのでなければ意味がなく、事前に被疑者に令状呈示することは想定できないこと等から、立法的な措置が望ましいと判示しました
 つまり、最高裁は、既存の令状ではなく、GPS捜査を適法化する新しい令状が必要だと要望した訳です。
 しかし、現状において新たな令状は導入されておらず、既存の令状(検証許可状等)付のGPS捜査の適法性が議論されています。これを認めた下級審判例はありますが、いずれ最高裁が統一的な判断を示すことになると思われます。以上
 

(2022.08)

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