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『改正民法の要点(18)』

 9月となり拙宅の百日紅の花が散り、代わって、朝顔が花を咲かせています。近所では、2階からネットをはって、朝顔のつるを登らせて、たくさんの花を上手に咲かせているお宅があります。来年は我が家でも真似しようかなと考えているところです。
 前回少しだけご紹介した新しい改正民法は、2021年に成立し、2023年4月から施行されるものです。
 今回の改正は、主として所有者不明土地問題の解決を目指したものです。そのため、民法の物権法のうち相隣関係、共有、財産管理制度等が改正・創設され、相続法のうち遺産分割や相続財産管理制度等が改正・創設されています。
 相隣関係については、前回ご説明した①越境した「枝」の切除に関する規定の拡充のほか、②隣地使用権の拡充、③ライフライン設備の設置・利用権に関する規律の新設等が行われています。
 まず、上記②ですが、従前、土地の所有者は境界又はその付近で壁や建物を建築したり修繕したりする場合、必要な範囲で隣地の使用を「請求」できることになっていました。
 しかし、隣地の所有者が使用を拒絶する場合や隣が所有者不明土地の場合、勝手に隣地を使用することはできません。訴訟を提起して承諾に代わる判決を得る必要があり手間と費用がかかります。
 そこで、改正民法209条1項本文は土地の所有者は必要な範囲で隣地を使用する「権利」があると規定しました。
 もちろん、使用の範囲は隣地にとって損害が最も少ないものでなければならず、隣地所有者に対して使用目的や使用方法を事前又は事後に通知する(同条第2項~4項)というプロセスを経る必要があります。
 また、壁や建物の建築や修繕の前提となる境界線の調査や測量、上記①の越境している「枝」の切除等のためにも隣地を使用する必要があります。
 そこで、同条第1項2号及び3号はこれらの目的のために隣地を使用する権利があることも明示しました。
 次に、上記③ですが、従前の民法には土地の所有者がライフラインである電気・ガス・水道等の設備を他の土地に設置したり、他人の設備を使用したりする規定はありませんでした。もちろん、解釈上は、必要な範囲で他の土地を利用できると考えられていました。
 しかし、明文の規定がないため、他の土地の所有者が設置・使用に応じない場合や所有者不明土地の場合、実際上設備を設置・使用できないという問題がありました。
 そこで、改正民法213条の2第1項は、必要な範囲でライフラインの設備を設置・使用することができると規定しました。
 もちろん、設備の設置・使用の場所や方法は他の土地にとって最も損害が少ないものにしなければならず(同条第2項)、また、1年ごとに償金を支払わねばなりません(同条第5項)。以上
 

(2022.10)

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