トピックス
『改正民法の要点(19)』
朝晩冷え込む様になりました。街中ではキンモクセイの香りが漂い、東京の秋だなと実感しています。
さて、前回ご説明したとおり、2023年4月から施行される民法の改正は、主として所有者不明土地問題の解決を目指したものです。
今回は、民法の「共有」規定の改正についてご説明します。
「共有」とは、ひとつの物を2人以上の者が共同で所有することです。所有者不明土地問題との関連では、従前、相続登記が義務化されていなかったことから(2024年4月から義務化されます。)、相続により土地が複数の相続人に共有されたり、相続人の相続によりさらに共有者が増えたりして、共有者の特定が困難になって、所有者不明土地が生まれていると指摘されてきました。
そこで、共有地や共有建物の管理・処分に関する民法の規定が見直されたのが今回の改正です。
すなわち、従前、民法は、共有物の「変更」は共有者全員(251条)により、「管理」は各共有者の持分価格の過半数(252条)により、「保存」は各共有者単独により、それぞれ行うことができると規定していました。
しかし、各項目の境が曖昧で、例えば建物の改修工事は「保存」なのか「変更」なのか、賃貸借等の設定も「管理」なのか「変更」なのか明確ではなく、実務上は安全サイドの「変更」として、共有者全員の同意を得て行われてきました。
そこで、もう少し柔軟に共有物の管理・変更ができるように、今回の改正により、共有物に「変更」を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)は持分価格の過半数で行うことができるようになります(251条1項)。例えば、建物の外壁・屋根の補修工事は、大規模リフォームに至らない限り「軽微変更」として持分価格の過半数で行うことができるようになります。
また、共有物の賃貸借等も「短期」であれば「管理」として持分価格の過半数で決することができるようになります。ここで「短期」とは、動産6カ月、建物3年、樹木の植栽又は伐採を目的とする山林10年、それ以外の土地5年です(252条4項)。
ただし、借地借家法が適用される不動産の賃貸借は、返却時期が不確定のため一時使用目的か定期借家権でない限り、共有者全員の同意が必要です。
さらに、共有者の中で賛否を明らかにしない者がいる場合は、裁判所の決定を得て、他の共有者の持分価格の過半数により「管理」できるようになります(252条2項2号)。
同様に、共有者の中で所在不明者がいる場合も、裁判所の決定を得て、他の共有者全員で「変更」(251条2項)を、持分価格の過半数で「管理」(252条2項1号)をできるようになります。
以上
(2022.11)