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『2023年の課題』

 2023(令和5)年を迎え、皆様のご健康とご多幸を祈念致します。
 新型コロナのオミクロン株の感染がなかなか収まりません。むしろ年末年始にかけて感染者数は拡大傾向とのことですから、新型コロナ対策が今年も重要課題であることは間違いありません。
 もっとも、政府はできるだけ国民に行動制限を課さずに経済を廻そうとしていますので、懸念された個人や法人の営業や移動の自由に対する制限は、それほど生じてはいないようです。
 また、政府はマスクの着用も原則不要と広報していますが、これについては先日、大阪地裁で、マスク不着用の飛行機の乗客に対して執行猶予付き懲役2年の有罪判決が下されました。
 もっとも、この判決はマスクの不着用自体を犯罪と認定したものではなく、不着用者の機内における暴言等により飛行機の安全運航が阻害されたと認定したのです。
 一般的に、飛行機や列車などの公共交通機関の運行会社には、安全運行を維持するため、利用者の権利・自由を合理的な範囲で規制する権限が認められます。利用者は利用約款で運行会社の権限に従うことに合意して公共交通機関を利用しているので、利用中は原則として運行会社の指示に従わねばなりません。判決の事案では、不着用者に運行会社の指示に従わない例外的な事情が認められなかったということになります。マスク問題に限らず、本年もコロナ対策と私権制限問題が様々な場面で問題になると思います。
 さらに、政府の政策変更に伴い、訪日客も徐々に増加しています。しかし、一度に大勢の観光客が訪日すると、外国での感染が流入する危険性が高まります。国民に対するような要請だけでは足りず、法令に基づく行動規制が必要になると思います。
 今年の課題としてもうひとつ挙げたいのは、司法制度改革審議会意見書(2001年6月)に基づく司法分野の改革が進められてから約20年が経過したことです。昨年9月に学者グループが「平成司法改革の研究」(須網隆夫編・岩波書店)という本を出版したことがひとつの契機となり、弁護士会では来年以降司法制度改革20周年を記念した様々なプロジェクトが企画されています。
 司法改革による法曹人口の急拡大は、国民の司法アクセスの改善に役立ったことは間違いありません。しかし、弁護士間の競争を激化させ、法律業務をよりビジネス化させたことも事実です。
 そのため、時間と費用がかかる一般民事訴訟事件の数は長期低落傾向に陥り、コスト意識だけでは癒されない家事事件や人権侵害事件の数が増大しています。
また、近年、業務のIT化・AI化や、数百名の弁護士数を擁する巨大事務所の出現等、法曹業界で大きな変化が生じています。
 平成の司法改革が真に国民の役に立つ改革だったのかどうか検証すると共に、令和という新時代にふさわしい司法改革が必要になっていると思います。以上
 

(2023.01)

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