トピックス

『技術の進歩と司法(2)』

 今年は猛暑のせいか、拙宅の2本の百日紅(さるすべり)の花の散る時期が例年より早く、8月半ばくらいから毎日前面道路の掃き掃除に追われています。
 さて、前回ご紹介したとおりODRとはデジタル技術を活用して調停等の裁判外紛争解決手続(ADR)をオンライン上で実施するものです。
 わが国ではまだ馴染みの薄い手続ですが、諸外国ではEコマース(ネット通販)に伴う紛争の解決手段として広く利用されています。
 例えば、アメリカのebayにはネット通販上の売主と買主の取引上の問題を解決するためのシステム(ebay Resolution Center)があります。そこでは年間6000万件もの紛争が解決されているといわれています。申立の内容は買主であれば商品不到達か商品の瑕疵、売主であれば代金未払か取引解除と限定されていますが、紛争介入から48時間以内に応答して当事者がとるべき措置を決定するため、簡易迅速に紛争を解決できるといわれています。
 また、シンガポールでは、交通事故案件は、オンライン化したプラットフォームにアクセスすることによって解決できます。
 さらに、イギリスでは、2万5000ポンド(約350万円)未満の少額民事請求事件について、オンラインによる紛争解決が可能となるオンライン裁判所が開設される見込みです。
 諸外国におけるODRの発達を踏まえ、わが国でも早急にODRを活用する必要があると判断した法務省は、昨年2月に「ODRの推進に関する基本方針~ODRを国民の身近なものとするためのアクション・プラン」を策定しました。
 また、このアクション・プランに基づき、今年9月1日から「ODR実証事業」が実施されることになりました。法務省が公益財団法人日弁連法務研究財団に委託して行われるもので、この事業の法律相談及びADRは日弁連ADRセンターが運営します。
 日弁連はこの事業を「ONE」(ODR New Experienceの略)と命名しました。
 ONEでは養育費、婚姻費用、賃料、売買代金、賃金などの金銭債権に関する紛争を取り扱います。「お金のトラブルをワンストップ解決」できると広報されていて、ONEの法律相談及びADRは弁護士がチャット機能を利用して実施するそうです。
 ONEの実施期間は令和5年9月1日~令和6年2月28日、新規法律相談受付期間は令和5年9月1日~同年12月8日、実施期間中は誰でも無料で利用できます。
 期間限定の試みですが、利用者の評価が高ければ継続的な取り組みとなるかもしれません。以上
 

(2023.09)

インデックス

このページの先頭へ