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『成年後見制度の現状(1)』

 今回から「成年後見制度」の現状についてご説明したいと思います。
 成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力が不十分であるため、法律上の意思決定が困難な方々のために、本人の権利を守る援助者(後見人など)を選任して支援する制度です。
 この制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
 法定後見制度では、本人の判断能力が不十分になった時以降に、関係者の申立により、家庭裁判所が後見人などを選任します。後見人などは法律の定める権限内で本人を支援します。法定の制度なので、精神鑑定が必要でない限り、申立費用はさしてかかりませんが、申立人が後見人などを選ぶことはできません。
 任意後見制度では、本人が判断能力を保持している間に、あらかじめ任意後見人を選任し、同人に与える権限を定めておきます。本人の判断能力が不十分になった時に、任意後見人が授権された範囲内で本人を支援します。この制度では本人が後見人を選ぶことができ、また、授権の範囲も自由に決めることができます。ただし、法定の制度よりも手間と費用がかかります。
 成年後見制度は平成11年改正民法などによって定められ、平成12年4月から施行されました。施行以来、成年後見制度の利用件数は徐々に増加しています(平成29年約21万件~令和4年約24万5000件)。
 しかし、わが国における急速な少子高齢化(令和元年における65歳を超える高齢者人口の割合は総人口の約28%。令和4年における平均寿命は男性81歳・女性87歳)および急増する認知症有病者数(研究機関の試算によると令和7年で約700万人に達する見込み)に対応するためには、利用件数がまだ不十分と言わざるを得ません。
 そこで、平成28年には成年後見制度利用促進法が成立し、同法に基づき、成年後見制度利用促進計画が立案されています。
 第一期計画(平成29年度~令和3年度)において指摘された成年後見制度の問題点は、概ね、①後見人などの選任後における本人のニーズの変化に対応できない(後見人などが本人の意思を尊重しない場合がある)、②後見人などの専門性や事務内容に見合った報酬額の決定がなされていない(市町村ごとに報酬支援事業の実施状況が異なる)、③本人の権利擁護を適切に行う地域連携ネットワークの整備が進んでいない(行政・福祉・法律専門職・家庭裁判所の連携の仕組みがない)などと指摘されました。
 第二期計画(令和4年度~8年度)では、上記①~③の問題点に対応するべく、制度を定めている法律や運用の在り方はもとより、制度以外の支援策も含めて見直されることになっています。以上
 

(2023.10)

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