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『2024年の課題』
2024(令和6)年を迎え、皆様のご健康とご多幸を祈念致します。
昨年、春のWBCの活躍から暮れのFA交渉に至るまで、明るいニュースを発信し続けたのが大谷翔平選手でした。
その大谷選手とロサンゼルス・ドジャースが合意した契約書は電話帳ほども厚みがあるといわれています。英米では共通の常識や合意が存在しない前提で契約書を作成しますから、これだけの巨額かつ長期間の契約書となると膨大な量になるのかなと思いました。
大谷選手の契約書がどのような過程で作成されたのかは分かりませんが、一般に、英米の法律事務所が膨大な契約書を作成するときは、多数の弁護士やパラリーガルを投入しています。さらに、最近はAIを活用しているといわれています。わが国でも、今年はあらゆる分野でAIの活用が課題になると思います。
そもそもAIとは「人工知能」のことですが、その活用は既に1950年代から構想されていたようです。
1990年代までは、ブームが訪れては去っていったようですが、2000年代になると、パソコンやネットワークの普及率が上がり、コンピューター利用の裾野が大きく広がりました。
また、コンピューターの性能が格段に向上し、人間が大量のデータを準備する手間をかけずに自ら学習し(機械学習)、複雑な判断も下せるディープ・ラーニング(深層学習)が実用化されると、様々な分野に導入されていったのです。
その最先端がジェネレーティブAI(生成人工知能)ですが、これは、入力したテキスト(文書)の指示に基づいて文章や画像などを生成することができる人工知能というものです。
特にOpenAI社のChatGPTは生成する文章の言語能力が高く、ゲーム・チェンジャーと評され、GPT-4までは無償で提供されています。
ただし、司法界における研究によると現時点では、法律を正確に読み込んで理解する能力は人間の方が優っているようです。また、生成AIとは与えられた文章の構成を研究して同様の文章を生成する作業には秀でていますが、大陸法系のわが国の司法判断とは、事実を認定して法律をあてはめ結論を導くという3段階の作業の組合わせなので、この一連の作業は生成AIに向いていないという指摘もあるところです。
確かに、現時点でAIに裁判官をやってもらおうという発想は、そもそも憲法上の裁判官とは人間ですが、能力的にみても皆無だと思います。
しかし、将来、AIの能力が人間とそん色ないレベルまで上がってきたとき、裁判を受ける人間が、同じ人間である裁判官に裁かれたいと願うのか、人間的な感情や思想信条に左右されないAIに裁かれたいと願うのか、どちらなのでしょう。納得感、好悪感情、コスト意識など様々な観点から考えると、直ちに結論は出てこないと思われますが、皆様はどのようにお考えでしょうか。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。以上
(2024.01)