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『成年後見制度の現状(4)』

 新年早々能登半島では大地震が起き、多くの被害が発生しました。大雪が降る中で道路、水道、電気などのライフラインの復旧もなかなか進まないようです。被災者の皆様方には心よりお見舞い申し上げると共に、早期の復興を祈念いたします。
 さて、今回は「成年後見制度」のうち「任意後見制度」の手続についてご説明したいと思います。
 まず、任意後見とは、第1回でご説明したとおり、本人が判断能力を保持している間に自分の後見人を選任し、与える権限も定めておく制度です。本人の判断能力が不十分になった時に、任意後見人が授権された範囲内で本人を支援します。ただし、任意後見人には代理権はありますが取消権はありません。
 任意後見の手続は、①任意後見契約の締結及び②家庭裁判所に対する任意後見監督人の選任申立という2つの段階からなります。
 上記①の任意後見契約とは、本人と任意後見人の間で締結される、本人の生活療養看護及び財産管理に関する事務について、任意後見人に代理権を与える委任契約です。この契約には、任意後見監督人が選任された時から効力を生ずる旨を定める必要があります(任意後見契約に関する法律2条1号)。
任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書で作成しなければなりません(同法3条)。公証人により任意後見人に付与される代理権の範囲を正確に定めるためです。
 任意後見契約の公正証書を作成した公証人は、任意後見契約の登記を嘱託しなければなりません。この登記によって任意後見人の代理権の範囲が対外的に表示されるのです。
 任意後見契約が登記された後、本人の判断能力が不十分になった場合、本人、配偶者、4親等内の親族又は任意後見受任者が、上記②のとおり家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任の申立を行います(同法4条1項)。
 任意後見契約が発効すると、任意後見人は、委託された事務の処理にあたり、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(同法6条)。
 また、任意後見監督人は、任意後見人の監督、家庭裁判所に対する定期報告、急迫の事情がある場合に任意後見人の代理権の範囲内で必要な処分をすること、本人と任意後見人の利益が相反する場合に本人を代理することなどを行います(同法7条1項)。任意後見監督人は、任意後見人に対して、いつでも必要な報告を求めることができ、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができます(同法7条2項)。
 さらに、家庭裁判所は、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務処理に関する報告・調査を求め、その他必要な処分を命じることができます(同法7条3項)。以上
 

(2024.02)

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