今回は、本年2月に愛媛県松山市で開催された、弁護士国民年金基金の理事会・代議員会における議論をご紹介しましょう。私は同基金の役員を長年務めており、この会議にも参加していました。
松山市といえば、道後温泉が有名ですが、あいにく今年の7月まで本館は保存修理工事中とのことでした。ただ、本館の温泉を利用することはできましたし、別館は通常営業していました。
さて、国民年金基金の話ですが、私ども弁護士のほとんどは個人事業主なので、国民年金には加入していますが、厚生年金には加入できません。そこで多くの弁護士は、他の個人事業主の方と同様国民年金基金に任意加入しています。シニア用の資産形成のためには国民年金基金のほかiDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)等もありますが、国民年金基金は基本的に終身かつ確定年金で掛金を所得控除できることがポイントです。
今年度(令和5年度)、すべての国民年金基金(全国、歯科医師、司法書士及び弁護士)にとって重要なテーマが新規加入・増口時の掛金引き上げでした。
実は、国民年金基金は今年度が5年に1度の「財政再計算」の当たり年でした。財政再計算とは、公的な年金制度において、定期的に負担と給付のバランスを見直す仕組みのことです。公的な年金制度は長期間存続することが前提ですから、定期的に掛金額と年金額を再計算して収支のバランスを調整する必要があるのです。国民年金基金令第32条は、年金基金の掛金は年金及び一時金に要する費用の予想額並びに予定運用収支額に照らし、少なくとも5年に一度再計算されるべきであると定めています。
国民年金や厚生年金でも5年ごとに同種の「財政検証」が行われており、次回は来年度(令和6年度)の予定です。
国民年金基金の財政再計算においては、掛金額の算定の基礎率である①予定死亡率、②予定利率及び③脱退率のうち主として①と②を見直して再計算されています。
上記①の予定死亡率については、その低下(長寿化)は掛金引き上げの要素となるところ、国民の平均寿命が延びていることから、財政再計算の都度見直されています。今回も予定死亡率の見直しは避けられませんでした。
他方で、上記②予定利率については、その引き下げも掛金の引き上げ要素であり、1991年の設立当時は5.5%でしたが、運用環境の変化に応じて順次引き下げられ、現在は1.5%です。
もっとも、5年前の理事会・代議員会では、年金商品としての魅力を損なうとの懸念から、予定利率の引き下げは見送られました。今回の理事会・代議員会でも、他の金融商品との競合等を踏まえ、予定利率の引き下げは見送られました。
以上の結果、令和6年4月1日から終身年金の掛金が1~3%程度引き上げられることになります。
なお、今回の掛金引き上げは
新規加入・増口時に適用されるもので、既加入者の掛金には影響ありません。以上