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『成年後見制度の現状(8)』

 6月に入りましたが、今年の東京では梅雨入りが平年より2週間ほど遅れました。これから高温多湿の気候が1か月程続くのでしょう。
 さて、今回は、成年後見業務の終了の際の手続についてご説明したいと思います。
 まず、成年後見業務の終了事由としては本人の死亡が一番多く、そのほか本人の能力回復、成年後見人の死亡や辞任等があります。本人が死亡した場合、成年後見人は直ちに家庭裁判所に死亡診断書の写しを付して報告を行います。また、後見終了の登記を申請します。成年後見の開始時は家裁が成年後見登記を嘱託してくれますが、終了時は成年後見人が自ら法務局で登記手続をしなければなりません。
 本人の死亡から2か月以内に家裁に管理の計算を報告し、収支を明らかにして終了時の財産を確定します。この際、成年後見人の報酬付与申立も行います。
 そして、本人の死亡から6か月以内に相続人に相続財産の引継ぎ(相続財産から自己の報酬を控除した残額)を行い、家裁に引継書を提出します。この際、成年後見人は、相続人間の紛争に巻き込まれないように、相続人全員の合意を得て相続人代表者に相続財産の引継をすることが望ましいと言われています。
 成年後見人の権限は本人の死亡と同時に消滅します。しかし、成年後見人が、本人の死亡に伴う応急処分や事務管理等を行う場合があり、これを「死後事務」といいます(民法873条の2)。
 そもそも死後事務は必要性がなければならず、また、相続人の意思に反することが明らかなときは行えません。
 一般的な死後事務としては、まず、相続財産に属する特定の財産の保存行為が挙げられます。例えば、成年後見人が建物の簡易な修繕を行ったり、時効完成猶予を行ったりすること等です。
 また、相続財産に属する特定の債務の支払いを行う場合も挙げられます。例えば、成年後見人が、本人の入院費用や家賃のうち、本人の死亡前に弁済期が到来しているものの弁済を行うこと等です。なお、死亡後に弁済期が到来する債務については相続人が支払います。
 さらに、火葬や埋葬の契約締結が挙げられます。例えば、相続人のだれも遺体の引取り、火葬、埋葬等を引き受けないときに、成年後見人がこれらの契約を締結すること等です。ただし、この場合には、家裁の許可を得る必要があります。本来、遺体の引取り、火葬、埋葬等は相続人の義務だからです。また、相続人が判明しない場合は、死亡地の市町村長の義務であって、成年後見人の義務ではありません。しかし、実情としては、成年後見人がこれらの業務を引き受けざるを得ない場合があり、家裁の許可を得て行っています。
 なお、この場合でも、宗教的な葬儀や永代供養までは認められません。もっとも、火葬に付随する納骨、通夜、告別式等については、宗教から切り離された形式であれば認められることもあります。以上
 

(2024.07)

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