以前ご紹介した日本弁護士連合会の第30回司法シンポジウムが、11月2日(土)、霞が関の弁護士会館で開催されました。同シンポは、2000年代初頭に実現した「司法制度改革」の「到達点とこれからの課題」をメイン・テーマとして掲げていました。私は、同シンポ運営委員会の事務局長を務めており、当日は裏方として参加しました。
当日冒頭のプロローグ座談会では、早稲田大学の須網教授と朝日新聞の井田論説委員を招いて司法制度改革で実現できたことと実現できなかったことを議論して頂きました。
裁判員、法曹養成、民事法律扶助等の多くの制度が導入された一方、各制度の達成度が不十分との指摘もありました。
続いて行われた特別対談では、元最高裁判事である山本弁護士に、最高裁判事に就任された経緯と、最高裁判事として積極的に取り組まれた課題について伺いました。
山本弁護士は内閣法制局長官から最高裁判事に就任された方ですが、長官当時は内閣の方針と異なる意見だったことから、最高裁判事に異動させられたとのことです。しかし、最高裁判事として、時の政権の意向に忖度することなく1票の格差問題に切り込んだとのことでした。
午後からは4つの分科会に分かれて各テーマ(裁判官制度、少子高齢化、行政内部の法の支配、司法制度とAI)を検討した上、各分科会の報告者が「これからの課題」として各テーマにおける
AI(人工知能)の活用について意見交換しました。
何人かの分科会報告者から、AIの活用に消極的な意見が示されたことが意外で印象的でした。
最後は「法の支配とAI」と題して明治大学の太田教授、慶応義塾大学の駒村教授、元知財高裁長官の髙部弁護士及び倫理とAIの関係の研究者である福岡弁護士を招いたパネル・ディスカッションが行われました。
このパネルでは、むしろ、AIの活用に積極的な意見が多く出されましたが、それでも、やはり、法の支配における人の存在意義が重視された議論だったと思います。
現在、司法界全体にAIとの競合に漠然とした不安感が広がっています。しかし、AIの活用には①支援、②代替、③シンギュラリティ(AIの優越)の3段階があるといわれているところ、①手続や判断の「支援」ツールとして
AIを活用する場合は、業務の効率化に繋がると思います。
また、人ではコスパが合わない業務分野や地域社会において、人と同等の能力を有するAIを、②人の「代替」として活用することを避ける必要はなさそうです。
ただし、③AIが人に「優越」する段階が司法分野で到来するかどうかはまだ分かりません。しかし、例えば、刑事事件の被告人、行政事件の原告、家事事件の利用者等から、社会的圧力や偏見に弱い人の裁判官よりも、能力が均等で何者にも忖度しないAI裁判官の方が望ましいとの声が上がるようになれば、「優越」時代が到来するかもしれないと考えています。以上